RESEARCH ACTIVITY

効率良い呼吸リハビリでサポート
理学療法学科
金尾 顕郎
教授
Kenrou Kanao
研究領域
呼吸理学療法の効果、水中運動療法の効果、自律神経刺激法の効果
経歴
昭和53年 大阪市立大学医学部附属病院リハビリテーション部勤務
平成11年 大阪市立大学医学部附属病院リハビリテーション部 主査
平成16年 大阪市立大学医学部 運動生態学講座 研究員
平成17年 大阪市立大学医学部看護学科非常勤講師
平成17年 大阪市立大学医学部 分子病態学講座 研究員
平成19年 行岡リハビリテーション専門学校 非常勤講師
平成19年 北野病院リハビリテーションセンター 研究員
平成19年 大阪市立大学大学院 医療研究科呼吸器内科学 研究員
平成19年 近畿大学医学部附属病院 リハビリテーション科 指導員
平成22年 市立堺病院 RCT 指導講師
金尾 顕郎 教授

先生の専門はどのような分野ですか?

理学療法の中でも内科系、その中でも呼吸器系のリハビリテーションが専門です。

呼吸器系のリハビリとは、どんなことをするのですか?

呼吸器疾患などで呼吸がしづらくなった人に対し、効率の良い呼吸ができるようにするものです。具体的には、患者さんの呼吸にあわせて胸郭に手で圧力を加え、胸郭が正しく動くように導いたりします。また、痰を詰まらせて肺炎になるといった術後の二次的障害を防ぐため、痰を排出できるようサポートしたりもします。呼吸器系のリハビリというと、肺周辺のイメージがありますが、私の場合は足の先から頭のてっぺんまで全身を対象とした理学療法を行っています。

呼吸のリハビリなのに、なぜ全身が関わってくるのですか?

たとえば、姿勢の安定は舌の状態に影響されることが分かっています。舌は「体幹筋」であり、首の筋肉や横隔膜、腹部の筋肉、骨盤底筋群と1つのユニットになっていると言われています。このように、足の先から内臓、肺、心臓などは結合組織でつながっており、呼吸のためには胸の中だけでなく、腹部や足首の動きも変えていく必要があるのです。また、皮膚からの刺激で交感神経を高ぶらせ、呼吸をしやすくするという神経生理学的なアプローチにも取り組んでいます。息切れしているおじいちゃんの背中を、おばあちゃんが少し触ってあげると、呼吸のしやすさがガラッと変わった例もあり、(ツボを刺激する)鍼灸治療とも通じるものがあります。

当面、研究においてどのような目標を持っていますか?

体の各部位のリハビリをどのような順序で行えば、より高い効果が得られるのかを明らかにしたいです。さらに、脳波や脳血流分布などの測定により、患者さんの感じる快・不快を可視化し、それを基にリハビリの効果を検証したいと考えています。

理学療法士という仕事の楽しさは、どこにあると考えますか?

やりがいのある仕事なので、理学療法士になれてよかったと思っていますが、実は仕事が楽しいと思えることはあまり多くありません。患者さんは毎日苦しんでいますし、こちらが「ここまで治ってほしい」と思うところまで到達しない時は、ひどく落ち込みます。しかし、だからこそ患者さんの笑顔には助けられます。

理学療法士を目指す学生に伝えたいことは何ですか?

本学の学生さんは能力も高いですし、一人ひとり話してみると芯もしっかりしています。ただ、今の時代は進路に多様性があり、中には、ネイルアーティストやプロ野球選手の道も考えていたという学生もいたりして、(理学療法士を目指す)目的意識が少し薄いと感じることがあります。昔に比べれば進路の方向転換もしやすくなっているのかもしれませんが、もう少し覚悟を持って大学に来てほしいと感じますね。

(平成26年2月25日)