RESEARCH ACTIVITY

研究活動 RESEARCH ACTIVITY REPORT

学術論文

宮本 佳子先生

看護学科
宮本 佳子先生

COVID-19禍における看護大学生の職業意識に影響する自己効力の学年間比較

著者:宮本佳子、西山忠博
掲載誌:森ノ宮医療大学紀要 2024; 18: 1-11.
Weblink:https://morinomiya.repo.nii.ac.jp/records/2000045

COVID-19蔓延下において、A看護大学生1~4年生(297名)を対象に、自己効力が職業意識に及ぼす影響を調査し、自己効力を高める支援について先行文献から考察を行いました。各学年の結果から、3年生の自己効力得点が、他学年と比較して低く(図1)、看護職に対する思いも、消極的な回答がみられました(図2)。この要因としては、3年次の実習に対する不安が大きいことが考えられます。そのことから、具体的な支援として、メンタルヘルスケア、感染予防対策の教授、学内実習の充実化が重要であることが示唆されました。今後は、教員として自己効力を高められる関わり、研究者として看護教育に関する研究を継続して行う予定です。

図1 各学年における自己効力得点の平均値

図2 看護職種に対する思いの学年比較

関根 将先生

臨床検査学科
関根 将先生

教員・学生それぞれの立場から見た寄生虫学に対する意識

著者:関根将
掲載誌:臨床検査学教育誌 2024; 16(1): 6-15.
Weblink:https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202402217344052941

この論文は、日本における寄生虫学教育の現状と課題を明らかにするため、臨床検査技師養成校の教員と学生を対象にアンケート調査を実施しました。調査には63名の教員と1,043名の学生が参加しました。解析結果から、多くの学生が寄生虫学に対してネガティブな印象を持っている一方、実物を観察する講義を希望していることが分かりました。しかし、教員は寄生虫症の減少に伴い教育用サンプルの安定確保が難しいという問題を抱えています。これにより、寄生虫学教育を持続可能かつ効果的に行うためには、各養成機関間で標本を共有する制度の確立や、短期間で効率的に学べる新しいカリキュラムの開発が必要であると結論づけています。

この図は学生から得られたアンケート結果をまとめたものです。図中の円それぞれが1つの単語に対応しており、関連の深い単語同士が矢印で繋がっています。ノードの大きさはその単語が出現した回数、矢印の太さは単語同士の関連の深さを表しています。

小田 啓之先生

鍼灸学科
小田 啓之先生

Acute effects of low-intensity one-legged electrical muscle stimulation on arterial stiffness in experimental and control limbs.

(実験脚および対照脚に対する一過性の低強度片脚電気刺激が動脈スティフネスに及ぼす影響)

著者:Oda H, Fujibayashi M, Kume D, Matsumoto N, Nishiwaki M.
掲載誌:Sci Rep. 2024 Mar 20;14(1):6658.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38509144/#full-view-affiliation-1

これまで低強度の電気刺激により動脈スティフネス(血管の硬さ)が低下するという報告がありますが、この低下は、身体全体に起こるのか、電気刺激を与えた部位のみに起こるのかは明らかにされていませんでした。そこで本研究は、片脚に低強度の電気刺激を行うことで、動脈スティフネスにどのような変化が起こるか検討しました。対象者の左脚に、低強度の電気刺激を行いました。電気刺激の強度は、対象者が痛みを感じることなく、脈拍が15拍程度上昇する強度としました。その結果、電気刺激を行った左脚のみ動脈スティフネスが低下しました。つまり、低強度電気刺激による動脈スティフネスの低下は刺激を与えた部位のみに起こることが分かりました。

中村 めぐみ 先生

作業療法学科
中村 めぐみ先生

Psychometric Properties of the Japanese Version of the Health Enhancement Lifestyle Profile (HELP-J) Using Rasch Analysis: A Preliminary Study

(ラッシュ分析を用いた健康増進ライフスタイル評価尺度日本語版(HELP-J)の心理測定学的特性に関する予備的研究)

著者:Nakamura, M., Yokoi, K., Tanimura, H., & Hwang, E. J.
掲載誌:Occupational therapy in health care.2024; Mar.18:1–18.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38497364/

The Health Enhancement Lifestyle Profile (HELP)は、カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校教授のDr. Eric Hwangが開発した56問、7領域の健康を増進するライフスタイル評価尺度です。対象者は55歳以上の地域で生活する人々で、現代テスト理論を用いて作られたHELPは、6件法で答えるアンケート調査方式の尺度ですが、一次元性が担保されていることから各領域で合計点を算出して判定することができます。またその結果から、より健康なライフスタイルを送るためのコンサルティングと再評価が簡単に行えます。
本研究では、許諾を得て作った日本語版を用いて得られた109名の回答をもとに、原版と同様、ラッシュ分析を用いてHELP日本語版の妥当性を検討しました。分析の結果、日本語版では7領域のうち5領域で妥当性が認められ、また3件法で回答する方式が支持されました。本研究結果から、原版と同様に一次元性を担保する項目を確認することができました。今後は、これら結果をもとに日本語版の妥当性と信頼性の検証を進め、地域での実用化を目指します。

Hwang教授の森ノ宮医療大学での講演(2018年,筆者は通訳を務めた)

冨田 哲也先生

大学院 看護学専攻
冨田 哲也先生

Tibial morphology of symptomatic osteoarthritic knees varies according to location: a retrospective observational study in Japanese patients.

(変形性膝関節症の脛骨骨形態は部位によって異なる:日本人患者を対象とした観察研究)

著者:Ishibashi T, Konda S, Tamaki M, Okada S, Tomita T.
掲載誌:Sci Rep. 2024 Feb 8;14(1):3250.
受賞:森ノ宮医療大学 第6回 学長賞(優秀論文賞)
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38332045/

本研究では、人工膝関節置換術または高位脛骨骨切り術を受ける予定の変形性膝関節症患者31名を分析し、3次元(3D)骨モデルを用いて脛骨近位部の形状変化を調べました。内側脛骨近位皮質(1.63 mm)は、脛骨結節(2.50 mm)および外側皮質(2.38 mm)に比べてばらつきが少ないことがわかりました(それぞれp = 0.004およびp = 0.020)。内側脛骨プラトー(1.46mm)は、外側脛骨プラトー(1.16mm)に比べて大きなばらつきが見られました(p = 0.044)。3D形状を理解することは、人工関節置換術や膝関節骨切り術用のインプラントの開発に役立つ可能性があります。実際に我々はすでに今回の研究成果に基づき日本人変形性膝関節症患者の3次元的骨形態にマッチしたプレートを作成し臨床応用し良好な成績をあげています。

図1 検討した脛骨大きさは下記のとおりまちまちであった。

図2 最新の3次元骨形態計測で脛骨近位部の骨形態を評価すると脛骨内側は誤差が非常に少なかった(青から緑)つまり脛骨の大きさはまちまちでも脛骨近位内側の骨形態はほぼ同じであることが解明された

図3 今回の骨形態計測のデータを基に日本人変形性膝関節症患者の脛骨にぴったりと合うプレートを臨床開発し実際の手術で使用している

工藤 慎太郎 先生

MINCL 所長
工藤 慎太郎先生

Effects of short foot exercises with ultrasound bio-feedback on motor learning and foot alignment: A double blinded randomized control trial.

(超音波画像によるバイオフィードバックを用いたショートフットエクササイズが運動学習と足部アライメントに及ぼす効果:二重盲検化ランダム化比較試験)

著者:Kudo S, Hatanaka M, Kanazawa S, Hirakawa K, Hara S, Tsutsumi M
掲載誌:J Back Musculoskelet Rehabil. 2023. Online ahead of print
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38160335/

足の土踏まずのなくなった扁平足は代表的な足の変形で、様々なスポーツ障害や加齢に伴い発生する関節の痛みや転倒の原因になります。治療として、足の裏の細かな筋のトレーニングとして足の指を曲げずに足の長さを短くするように土踏まずを作る運動を指導します。この運動がとても難しく、先行研究では20分から1時間以上指導するとされています。私たちは超音波エコーを使って、この運動を視覚的に見せながら行うことで、2分で運動ができるようになり、5分実施すれば、1週間後も自主トレとして継続でき、足の使い方を覚えておけることを報告しました。この結果から超音波を使ったトレーニング指導の有効性を示すことができました。

川添 英利子先生

看護学科
川添 英利子先生

介護老人福祉施設における食事支援に関する介護者の職種による認識の比較

著者:川添英利子、酒井英樹
掲載誌:日本介護福祉学会誌 2023; 30(1): 18-30.
Weblink:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jarcw/30/1/30_18/_article/-char/ja/

本研究は、全国の無作為抽出した特養(400施設)の介護・看護・リハビリ職員(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)を対象に食事支援の内容とその認識に関する調査を行いました。全職種ともに同様の傾向であり、「高齢者に食事を楽しんでもらえたか」という認識は低く、「食事を安全に提供できたか」という認識は高いものとなっていました。また、楽しみ認識は、安全認識に繋がる可能性があることが見えてきました。安全認識できているものが有意であった食事支援には、「座位姿勢の調整」「食べ物の形態・味付けについて医師、栄養士等に相談する」などがあり、これらのケアを重視していくことが要介護高齢者の食事の安全に繋がることが示唆されました。

鍵野 将平先生

作業療法学科
鍵野 将平先生

Adelaide Driving Self-Efficacy Scale(ADSES)の日本語版尺度開発(尺度翻訳の検証)

著者:鍵野将平、田中寛之、小川泰弘、永田優馬、石丸大貴
掲載誌:日本安全運転医療学会誌 2023; 3(1): 59-64.
Weblink:http://js-safedrmd.jp/kangou/kangou_3-1.html

Adelaide Driving Self-Efficacy Scale(ADSES)は運転時の自己効力感を測るために2007年にオーストラリアのGeorgeらによって作成されたアンケート形式の評価尺度です。私たちのグループは、開発者のGeorgeに許可を得て、この評価尺度の日本語版を開発しました。本論文では、その翻訳の妥当性を検証しています。
日本では、自動車運転支援を行う作業療法士が4000人以上おり、神経心理学的検査やドライビングシミュレーター、実車評価などを用いた評価や訓練が行われています。運転行動は認知・予測・判断・操作の一連の行動から成り立ち、これには様々な心理的要素も影響します。本評価尺度がこうした心理的側面の評価に役立つよう、さらに検証を進めていきます。

堤 真大先生

MINCL 運動療法エビデンス研究チーム
堤 真大先生

Posteromedial capsular anatomy of the tibia for consideration of the medial meniscal support structure using a multidimensional analysis

(膝後内側関節包から考える内側半月支持機構-解剖学的研究-)

著者:Tsutsumi M, Nimura A, Tharnmanularp S, Kudo S, Akita K
掲載誌:Sci Rep. 2023;13(1):12030.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37491561/
紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=gZvBT-NvRbQ

近年、早期変形性膝関節症に関わる病態として内側半月の逸脱が着目されています。本研究では、膝後内側の関節包に着目し、内側半月の支持機構を再考しました。関節包の脛骨付着領域は従来考えられてきたものより幅広く、内側半月の後根とも連続していました。この連続性は、互いにかかるストレスの分散に寄与すると考えられました。また、関節包自体が半膜様筋腱の腱鞘を成し、腱によって関節包が2層になっていました。膝後内側には明瞭な靭帯は存在せず、関節包が成す層の一部を従来靭帯として認識してきたと考えられました。また、関節包と半膜様筋の相互作用が内側半月の支持に重要であると考えられ、既存の内側半月支持機構を再考していく必要性が示唆されました。

東 泰弘先生

作業療法学科
東 泰弘先生

Development of toileting behaviour evaluation for Japanese older patients using wheelchairs in a hospital setting: a validation study

(車椅子を使用する日本の高齢患者に対するトイレ動作評価法の開発:信頼性と妥当性の検証)

著者:Higashi Y, Kaneda T, Yuri Y, Horimoto T, Somei Y, Hirayama K
掲載誌:BMC Geriatr. 2023; 23(1):353.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37280510/

トイレ動作の自立が困難である場合、生活の質(Quality of Life)、精神衛生、そして社会参加の低下を引き起こすことが報告されています。そこで、私たちはトイレ動作を22の動作に分類し、各動作を6段階で評価する「トイレ動作評価尺度(Toileting Behavior Evaluation:TBE)」を開発しました。この研究では、日本の6カ所の急性期および回復期病院で、開発したTBEの信頼性と妥当性を検証しました。その結果、作業療法士は経験年数に関わらず、TBEを有効に使用できることが明らかになりました。今後は、TBEを使用してトイレ動作に困難を感じている方々の支援を続けていきたいと考えています。

今井 信也 先生

診療放射線科
今井 信也先生

Evaluation of factors associated with the effectiveness of radiation protection glasses

(放射線防護メガネの有用性に関する要因分析)

著者:Shinya Imai, Asuka Yamahata, Akihiro Kakimoto, Yasuyuki Kawaji, Tatsuhiro Gotanda, Takuya Akagawa, Hidetoshi Yatake
掲載誌:Radiation Protection Dosimetry. 2024; 199(8-9):1002-1006.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37225197/

放射線を使用した検査は診断にとって非常に有用であり、現在の医療では欠かすことが出来ません。しかし、放射線検査を行う医療スタッフは絶えず放射線被ばくに曝される危険性があります。特に水晶体への放射線被ばくは白内障発症リスクを高めるため、何らかの対策が必要です。放射線防護メガネは医療スタッフの眼を守るのに非常に簡便な器具ですが、様々な種類が市販化されており、それらのレンズの鉛当量や形状も異なっています。
本研究では、10種類の放射線防護メガネからレンズの鉛当量や形状による放射線防護効果について水晶体用線量計を使用して実証しました。ピアソンの相関分析より水晶体への放射線防護効果はレンズの形状よりレンズの鉛当量が大きく影響していることが示されました。

Figure 1. Shapes of various radiation protection glasses and attachment positions of lens dosemeters

Table 1. Correlation coefficient between each dose and lead equivalent and lens area

河西 謙吾 研究員

MINCL
河西 謙吾研究員

Automatic Identification of Ultrasound Images of the Tibial Nerve in Different Ankle Positions Using Deep Learning.

(足関節の異なる肢位での脛骨神経の超音波画像解析‐深層学習を用いた自動識別‐)

著者:Kawanishi K, Kakimoto A, Anegawa K, Tsutsumi M, Yamaguchi I, Kudo S
掲載誌:Sensors (Basel). 2023;23(10):4855.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37430769/

足関節の可動域制限には脛骨神経が影響します。具体的には足関節の背屈運動に伴い、脛骨神経の撓みが減少し、滑走・緊張が生じます。従来は超音波エコーのせん断波エラストグラフィ機能や流体画像解析の技術を用いて評価を行っていましたが、より簡便なBモード画像から脛骨神経の緊張を判定するために深層学習を用いた自動で識別を試みました。本研究は診療放射線学科の先生方との共同研究にて成り立っております。今後も職種・領域の垣根なく、多くの成果を挙げたいと考えております。

小宮山 恭弘先生

臨床検査学科
小宮山 恭弘先生

超音波減衰法ATI(Attenuation imaging)による未病患者の肝臓スクリーニング意義

著者:小宮山恭弘、脇英彦、竹岡啓子
掲載誌:日本未病学会雑誌 2023; 29(1): 16-20.
Weblink:https://mol.medicalonline.jp/library/journal/abstract?GoodsID=di6nihon/2023/002901/002&name=0016-0020j&UserID=150.99.191.102

成人の肥満割合の増加に伴い、非アルコール性脂肪肝(NAFLD Nonalcoholic fatty liver disease)が注目されています。これらのうち肝硬変への進展が予測される病的脂肪肝は、2023年の欧州肝臓学会国際肝臓学会議にて、代謝性(Metabolic)という意味を含むMASLD(Metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)へ名称変更されました。脂肪肝は肝臓への脂肪沈着が原因ですが、この肝臓への脂肪沈着を数値にて評価可能な超音波減衰法ATI(Attenuation imaging)が新たに開発されました。本研究ではATI法を用いて病的な脂肪肝の重症度判定が可能であるのか検討を行いました。
検討の結果、肥満群や肝機能低下群、脂質代謝異常群や血糖値の高い耐糖能低下群では、いずれもATI法にて測定した肝臓での減衰係数が大きいことが確認されました。結果、本法は脂肪肝群のうち、将来肝硬変や肝癌発症に進行するハイリスク群の拾い上げに役立つ検査方法であることが確認されました。

超音波減衰法ATI(Attenuation imaging)測定例

学会発表

八幡 久美子先生

看護学科
八幡 久美子先生

病院看護師および看護系大学教員が看護系大学生に期待する看護専門職としての態度・行動の内容分析

発表者:八幡久美子、内田宏美、下岡ちえ
学会名:第34回日本医学看護学教育学会学術学会
開催日:2024年3月2日

専門職には高度な知識・技術を身につけ、人のために責任もって行動することなどが求められます。それらプロフェッショナリズムと言われるものは、学生のうちから培っていく必要があります。看護師を目指す学生に備わったプロフェッショナリズムを測る尺度(ものさし)があると、その成長度が見えると考えました。そこで、プロフェッショナリズムの構成要素を調べるために、専門職の人たちにインタビューしたのが、この研究です。インタビューで得られた構成要素をもとに、尺度化に向けてその後も研究を続けています。

林 真太郎先生

理学療法学科
林 真太郎先生

地域在住高齢者における転倒予防自己効力感と身体能力の自己認識の転倒発生との関連

発表者:林真太郎、見須裕香
学会名:第63回 近畿理学療法学術大会
開催日:2024年2月3日、4日

高齢者の転倒リスク因子の一つとして近年、転ばない自信度を示す転倒予防自己効力感の程度や、身体能力における自己認識と実際の能力の乖離度が着目されています。しかし転倒リスクが高い機能障害を有する高齢者を対象とした知見は十分でなく、本研究ではデイケアを利用する地在住高齢者を対象に調査を行いました。
その結果、転倒歴のある者は転倒予防自己効力感尺度(MFES)のスコアが低く、バーをまたげる高さなどの身体能力評価では自身を過大評価する傾向がありました。ただし、MFESのスコア分布はより低値と高値の二峰性の分布を示し、MFESが高くとも転倒している(つまり過信とも捉えられる)者もおりました。この結果から、高齢者の転倒リスク評価において、スコアのみで判断する事は注意が必要だと考えます。

岩佐 由美先生

看護学科
岩佐 由美先生

在宅で療養するパーキンソン病患者の看護上の課題:108人の患者情報より

発表者:岩佐由美
学会名:第43回日本看護科学学会学術集会
開催日:2023年12月9日、10日

パーキンソン病(PD)患者さんに対する効果的な看護の開発研究に取り組んでいます。この研究は、自宅で療養されるPD患者さんにどのような看護課題があるか、訪問看護師の方にアンケートで回答してもらい、分析したものです。自由回答に記載があった108人分のPD患者さん(平均78.4歳、平均ヤール3.8)の看護課題を分類すると、【ニーズを充足しながら感染予防】【便秘対応】【ADL維持と転倒予防、環境調整】【血圧変動に注意】などの課題がありました。これらがPD患者さんにとって大切な看護だと考えられます。現在、論文化に向けて準備中であり、今後はPD看護を分かりやすいものに標準化していくことを目指しています。

渡邉 敦子先生

看護学科
渡邉 敦子先生

Changes in self-understanding due to the introduction of MBTI ® into the nursing manager training program -Using Personality Inventory Myers-Briggs Type Indicator®-

(看護管理者研修プログラムへのMBTI®[Myers-Briggs Type Indicator®]導入による自己理解の変化)

発表者:Atsuko Watanabe,Yuka Omura,Toshiko Taniji,Kasumi Shibata,Tomomi Tsujimoto,Tomoko Inoue
学会名:第43回日本看護科学学会学術集会. 山口. 2023.
開催日:2023年12月9日、10日

日本の看護管理者は、45~55歳の中年期にあたる人材が概ね担っています。キャリアサイクルの段階において、中年期はこれまでのキャリアが一旦停滞し、アイデンティティと役割の混乱に直面することで、自身の価値観と願望を再検討するキャリアの危機に陥ると言われています。中年期の看護管理者へのキャリアサポートとして、自己の振りかえりや自己理解を深める機会を設けることが必要とされます。本研究では、13名の看護管理者(看護師長・副看護師長)を対象に自己理解を深めるツールとして世界50ヶ国以上で使用されているMBTI®を研修プログラムに導入し、尺度を用いて研修前・直後・1か月後で測定したところ、自己理解への変化が確認されました。

田丸 佳希先生

作業療法学科
田丸 佳希先生

Mild Cognitive Impairmentの新たなスクリーニング評価の開発

発表者:田丸佳希
学会名:第57回日本作業療法学会
開催日:2023年11月11日

認知症の前段階としてMild Cognitive Impairment(MCI)があります。最近では、このMCIの段階で早期治療を行うことで、進行を遅らせたり、新薬によっては回復が報告されることもあります。つまり、認知症対策には早期発見が極めて重要です。しかし、加齢に伴い認知症のリスクが高まっても、顕著な症状が現れないことが多いため、早期に医療機関で検査を受ける機会が少ないのが現状です。その結果、多くの場合、MCIを見逃してしまい、記憶障害が顕著になった段階では既に重症化していることがほとんどです。
本研究では、これらMCIの段階を早期に発見する為に、MCIで現れる初期兆候を先行研究から洗い出し、これらの特徴を組み合わせた新たなスクリーニング評価法「Cognitive Composition Test:CCT」を開発し、その有効性を示しまた。なお、このCCTの特徴は検査が短時間であり、専門知識がなくても検査が可能という強みがあります。

三宅 知里先生

助産専攻科
三宅 知里先生

Decision-making trajectories towards childbearing among female adolescent and young adult (AYA)cancer survivors in Japan:Trajectory Equifinality Approach

(AYA世代がん治療後に出産した女性の子どもを産み育てる過程と選択)

発表者:三宅知里
学会名:第8回森ノ宮医療大学学術大会
開催日:2023年10月22日

AYA世代でがんと診断され、がん治療後に出産した女性の子どもを産み育てる過程と選択を明らかすることを目的に調査しました。AYA世代がんに罹患し、治療後に出産した産後5年以内の女性に半構成的面接を行い、「複線経路・等至性モデル」を用いて分析しました。
対象者はAYA世代でがん治療後に出産した女性9名であり、【がん治療を受けるか考える】【妊孕性温存を考える】の分岐点で悩んでいました。がん告知と同時に将来子どもを産む・産まないの決断と共に、受精卵で凍結保存するために、結婚についても決断を迫られる対象者もいました。看護者は、がん治療だけでなく、女性が将来子どもをもつ希望を叶えるための情報提供を行い、女性自ら意思決定が行える支援をすることが重要です。

奥村 雅彦先生

放射線学科
奥村 雅彦先生

国内における放射線治療技術物理専門職のスキル・教育に関するアンケート調査

発表者:奥村 雅彦
学会名:第39回日本診療放射線技師学術大会
開催日:2023年10月1日

本発表は厚生労働研究「放射線療法の提供体制構築に資する研究(大西班)」で放射線治療技術物理に関するアンケート調査報告であった。放射線治療施設を対象に2022年6月に教育体制や専門資格関するアンケートを実施した。579施設(69%)から回答を得た。回答の50%以上ががん拠点病院、35%がJASTRO認定施設であった。新人教育制度を有する施設は10%、実習型教育訓練の実施施設は17%、学会等への参加を促している施設は84%であった。専門資格取得者への教育制度を有する施設は3.0%、実習型教育訓練の実施施設は8.9%、学会等への参加を促している施設は83%であった。専門資格取得のための費用を全額又は一部負担する施設は64%、専門資格取得者の学会等の参加費用を全額又は一部負担する施設は74%であった。教育体制がある施設は少ないが、学会等への派遣は肯定的であることが明らかとなった。関連学術/職能団体による系統的な教育研修を提供することが望ましいと考える。

角田 晃啓先生

理学療法学科
角田 晃啓先生

Virtual Reality技術を活⽤した運動療法は運動の継続を⽀援するか

発表者:角田晃啓
学会名:第9回日本糖尿病理学療法学会年次学術集会
開催日:2023年9月17日

内部障害系の理学療法では、対象の方に自分で運動していただくことが多いため、運動継続の意欲を高める工夫が必要になります。この研究は、「VRを用いることで運動が楽しく実施できるか」を明らかにするため、20分間を目標に、時計を見ずに運動するテストを行い、VRを使用した場合とそうでない場合の運動継続時間を比較しました。
結果として、運動継続時間に大きな違いは見られませんでしたが、VRが楽しかったという声が多く聞かれ、「PACES」という運動の楽しさを測定する指標にも反映されていました。
この研究は大学生を対象に行ったため、運動療法が特に必要とされる中・高齢者に対して同様の効果が期待できるかを確かめるためにはさらなる研究が必要ですが、楽しく、継続可能な運動療法開発の第一歩になると考えています。

竹下 ひかり先生

臨床検査学科
竹下 ひかり先生

認知フレイルの病態機序解明を目指した基礎的検討

発表者:竹下 ひかり、山本 浩一、武田 朱公、伊藤 祐規、樂木 宏実
学会名:第45回日本高血圧学会総会
開催日:2023年9月15日

高齢者において、身体的な虚弱状態(身体的フレイル)が、軽度認知機能障害を発症しやすいことが知られています。この両者が合併する病態は、“認知フレイル”として定義されていますが、その病態の発症機序などの詳細は分かっていません。
今回、我々は認知症の最大の原因疾患であるアルツハイマー病(AD)に注目し、ADにおける認知フレイルの病態生理を明らかにすることを目的に実験を行いました。ADモデルマウスを用いて認知機能と筋力を評価したところ、ADモデルマウスにおいて、認知機能障害の初期段階において、既に骨格筋障害が顕在化しているという結果を得ました。このことは、AD病態が骨格筋へ何らかの悪影響を及ぼしている可能性を示しており、今後その詳細なメカニズムを明らかにしていきます。

奥村 雅彦先生

放射線学科
奥村 雅彦先生

バーチャル放射線治療教育システムVERTの概要と教育効果について

発表者:奥村 雅彦
学会名:第17回日本診療放射線教育学会学術大会
開催日:2023年8月26日

第17回日本診療放射線教育学会学術大会(東京都立大学荒川キャパス)のプログラム企画「診療放射線技師養成機関の教育」で発表を行った。本大学が保有するバーチャル放射線治療用教育システム(VERT)は、大型スクリーンに投影されたバーチャルリニアックを3次元ビューメガネを通して見ながら実機と同じ条件でトレーニングができるシステムである。この報告では、VERTと治療計画装置を用いた臨床モードと線量測定・精度管理に関する物理モードの概要を説明するとともに、この体験型学習における学生教育効果について報告した。

放射線治療計画をバーチャルリニアック上で再現している場面を示す。照射法は、高精度放射線治療の1つであるVMAT(強度変調回転照射法)で、大学で最先端の照射法を疑似体験できるシステムである。

バーチャルリニアックを用いて3次元水ファントムによる高エネルギーX線測定を再現している場面を示す。臨床実習では見学・学修できる機会が少ないが、本学のシステムを用いて体験型教育を受けることができる。

15名のゼミ生に体験型教育を受ける前と後の客観評価テストを実施した結果を示す。両学年とも教育前より後の点数が良く、バーチャル体験型教育が有効であることを示している。(倫理審査承認番号2023−014)

小川 泰弘先生

作業療法学科
小川 泰弘先生

大学生における自閉スペクトラム症(ASD)/ 注意欠如多動症(ADHD)特性の併存とインターネット依存の関連

発表者:小川泰弘、田中寛之、芳賀大輔、東泰弘、横田さくら、多野渓子
学会名:第36回全国リハビリテーション学校協会教育研究大会
開催日:2023年8月25日~26日

近年、自閉スペクトラム症(以下ASD)、注意欠如・多動症(以下ADHD)などの発達障害がインターネット依存リスクを増加させることが報告されています。ASDとADHDはしばしば重複することが指摘されていますが、それらの特性が重複することでインターネット依存リスクが高まるかどうかについては不明です。そこで、本研究ではASD/ADHD重複した傾向を持つ大学生のインターネット依存に焦点を当てた研究を実施しました。
その結果、ASD/ADHDの特性を併せ持つ学生のグループは、他のグループに比べ有意にインターネット依存のリスクが高いことが明らかになりました。これは診断の有無に関わらず発達障害の特性自体がインターネット依存リスクを高める要因のひとつであることを示唆しています。

藤江 建朗先生

臨床工学科
藤江 建朗先生

人工呼吸療法における医療安全と養成校での教育について

発表者:藤江建朗、玉元由果莉、布江田友理
学会名:第45回呼吸療法医学会(名古屋)
開催日:2023年8月5日~6日

本発表は、私たちが行っている研究である『魅力ある呼吸療法教育プログラムの創造』についてまとめたものの一部をシンポジウム形式で報告したものです。
本研究は、臨床工学技士養成学生向けの人工呼吸療法に関する学内実習プログラムの開発を目的としています。本プログラムの中でも、臨床工学技士が人工呼吸療法に関わるうえで他の職種から期待されている人工呼吸器トラブルシューティングに主眼を置いて開発を行いました。具体的には、人工呼吸中の患者さんの挿管チューブの閉塞事案を早期に評価し、患者と人工呼吸器から用手換気へ切り替え換気を維持するアルゴリズムや、使用中の人工呼吸器の入れ替えの必要度を評価し入れ替え実施をするアルゴリズムを開発しました。今後は、これらのプログラムを実施した場合の学生への習熟度評価ツールの開発なども同時に行い、より良い学内実習プログラムのアルゴリズムを開発していきたいと考えています。

藤江 建朗先生

臨床工学科
藤江 建朗先生

Relationship between Sleep Efficiency and Time and Frequency Domain Analyses for Cardiac Autonomic Nervous System Activity

(睡眠効率と心臓自立神経系活動の時間および周波数領域解析との関連性)

発表者:Tatsuro FUJIE, Yukari TAMAMOTO, Hideo NAKAMURA
学会名:45th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (Sydney).
開催日:2023年7月24日~27日

睡眠検査のゴールドスタンダードとして、睡眠ポリソムノグラフィ(PSG)という検査があります。脳波や心電図など多数の電極を装着し入院を必要とする検査です。睡眠の質や睡眠関連疾患の診断に使用される検査ですが、毎日実施することは現実的ではありません。近年では、ウェアラブルデバイスから生体信号を取得し、睡眠状態や質を推定する研究が盛んに行われています。
本研究では、PSG検査から算出された睡眠効率の結果について、心電図から心臓自立神経系活動の各指標を計算した結果を用いて、睡眠効率の推定の可能性について検討を行いました。結果として、各指標のなかで時間領域解析であるEntropyの相関係数が最高値を示す結果となりました。本研究より、心臓自立神経系活動の指標を使用して睡眠状態の推定の可能性が示唆されました。

野田 大孝先生

臨床検査学科
野田 大孝先生

ヒト大動脈自然破綻プラークにおけるマクロファージの分子生物学的解析

発表者:野田 大孝
学会名:第55回日本動脈硬化学会総会・学術集会
開催日:2023年7月9日

動脈硬化には炎症が関与しています。コレステロール結晶を契機に自然免疫応答がなされ、マクロファージの関与が明らかとなってきました。マクロファージにはM1型(炎症型)とM2型(抗炎症型)に大きく機能が分類され、M1型からM2型の機能へ変化すると考えられています。大動脈のプラークは自然破綻することがあります、このときにマクロファージのM2型の存在がわかり、ヒトの自然破綻したプラークで証明したのは初めてでした。自然破綻という現象は動脈硬化による血管壁が厚くなることを防いでいる可能性があります。マクロファージM2型の機能はまだ不明な点がありますが、過剰な炎症を防ぐことは人体にとって有益であると考えられます。

川村 勇樹先生

臨床工学科
川村 勇樹先生

血液チューブ振動の自動波形識別による透析治療中の脱血不良モニタリング手法の提案

発表者:川村勇樹、池田拓洋、桑原健太、西手芳明、徳嶺朝子、山本衛
学会名:第62回日本生体医工学会大会
開催日:2023年5月20日

血液透析は、腎機能が低下した患者から血液を取り出し、老廃物および水分の除去を行った後、再び体内へ返すことで腎機能を代替する治療法です(図1)。しかし、様々な要因で十分な血液を取り出せない場合があります。この状態を脱血不良と呼び、できるだけ早く対処する必要があります。本研究では、脱血不良状態が血液回路チューブ径の変化に及ぼす影響を明らかにし、機械学習による脱血不良状態の判別手法を確立することを目的としています。透析中のチューブ径の変化は、特定の周波数で脱血不良状態を強く反映することが分かりました(図2)。また、機械学習の結果、高精度の分類が可能であり、脱血不良状態では誤検知が少なく、1例を除いて脱血不良度を予測することができました(表1)。以上の結果より、波形の特徴を捉えることで脱血不良を判別する事が可能であると考えられます。

図1.血液透析回路と測定器

図2.チューブ径の変化に関する周波数解析結果

表1.機械学習の結果(混同行列)

受賞

田丸 佳希先生

作業療法学科
田丸 佳希先生

森ノ宮医療大学 学術大会 優秀賞

学会名:2023年度第8回 森ノ宮医療大学 学術大会
テーマ:Mild cognitive impairmentの新たなスクリーニング評価の開発
発表者:田丸佳希、松木明好
受賞日:2023年10月22日

認知症は早期治療で重症化を抑制できます。特にレカネマブはアルツハイマー型認知症の新薬として注目されており、軽度から中等度の認知症患者に有効とされています。つまり治療に結びつけるには、早期発見が重要な課題となります。しかし、高齢者が医療機関で受診する機会は少なく、本人の意識や周囲の気づきが重要です。そこで本研究で開発したCognitive Composition Test (CCT)は、医学的専門知識を必要とせず、誰でもどこでも実施可能なスクリーニング評価です。CCTは高齢化社会の課題に貢献するツールとして期待されています。

中西 伸子先生

助産専攻科
中西 伸子先生

大阪府看護事業功労賞

学会名:大阪府看護事業部
発表者:中西 伸子
受賞日:2023年5月13日

「この度は、令和5年度の大阪府看護事業功労賞をいただきまして、大変光栄に思っております。大阪府下では私を含め、助産師は4名が受賞いたしました。表彰式では大阪府知事もおいでいただき祝っていただきました。教育歴も長いのですが、それと並行して行ってきた助産師としての社会活動も認めていただけたのかなと思っております。助産師会にも30年以上所属しておりまして、ここ6年東大阪班の班長も務めておりました。東大阪班のメンバーは40名ほどおり、助産師活動とともに研究も実施し大阪母性衛生学会などに発表しております。これからも一助産師であることも大切にし、さらにその経験を教育にも生かし活動していきたいと考えております。」

山口 功先生

診療放射線学科
山口 功先生

学術賞

学会名:日本放射線技術学会
発表者:山口 功
受賞日:2023年4月
公表:https://www.jsrt.or.jp/data/news/56576/

日本放射線技術学会「学術賞」は、「学会賞」、「功労賞」と並び、日本放射線技術学会の発展に寄与した者を表彰する「三賞」のひとつで、多年にわたり放射線技術学の研究業績または発展に多大な功績のあった正会員に贈られる名誉ある賞です。
この度、このような素晴らしい賞をいただけたこと、大変光栄に思っております。この受賞は、私個人の力ではなく、多くの諸先輩方に支えられた賜物と感謝しています。これからは、今までの経験を本学の学生をはじめ、多くの若い診療放射線技師に伝えていきたいと思います。

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