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１０月２０日（土）、大阪市住吉区の「大阪府立急性期・総合医療センター」にて、同センターと包括連携協定を結ぶ森ノ宮医療大学、相愛大学の３者連携による医療シンポジウムが開催されました。

『生と死を、今考える』というテーマで３年目（第３回）となる連続開催は、回を重ねるごとに好評を博し、今年も３００名近くの市民が参加聴講されました。
 
『生と死を、今考える　“疫を免じる”――がんと免疫の力』と題された今回は、世界に先駆けてWT１がんワクチンを開発し、今もがん免疫療法の開発に取り組んでおられる杉山治夫氏（大阪大学大学院医学系研究科教授）による基調講演「ここまで来たがん治療～WT１がん免疫療法 最新の成果」、および、大阪大学医学部にて杉山氏の後輩として研究を共にした谷尾吉郎氏（大阪府立急性期・総合医療センター医務局長兼総合内科部長）による関連講演「がん治療に関する免疫力」を聴く前半で、がん治療最前線での医学の進歩に驚愕させられると共に、「免疫力」という、人間が本来生まれながらにして持っている自分で自分を守る力、体内に入った細菌やウィルス、また体内で発生したがん細胞などの異物から身を守る力、についてさまざまに発見と感動を味わうことになりました。

表題テーマにある「免疫」とは、「疫病（病気)を免れる」こと。いったん、ある病原菌に感染することにより、その病気に対する抵抗力ができ、次からはかかりにくく（罹患しにくく）なることを言います。つまり、病原体や毒素、外来の異物、「自己（＝自分自身の本来の細胞など）」の体内に生じた不要成分を「非自己（＝異物。自分の体の外から入ってきた細菌やウイルスなど）」と識別して排除しようとする生体防御機構の一つで、その働きを「免疫力」と呼びます。

「がんを根治させ得るのは、免疫力である」として、がんを標的とした免疫細胞を誘導し、がん細胞だけを攻撃する新たな治療法を開発中の杉山氏。その研究から生まれた「WT１がんワクチン」は、アメリカ国立がん研究所による世界の７５種類のがんワクチンのランキングで第１位にランキングされたと言います。ビデオ映像により、「細胞傷害性T細胞（別名、殺し屋、キラーT細胞）」ががん細胞を攻撃し、次々と「殺し」ていく様子は、素人目にもわかりやすく、現在、複数の大手製薬会社により治験（＝薬事法上の承認を得るために行われる臨床試験）中であり「薬」になるのは数年先とのご説明でしたが、その日を待ちきれない思いを会場の全員が共有しました。

　そして休憩後、今度は表題の「生」を考える上で、「免疫力」を高めるために果たす役割が大きい笑いの効果について、パネリストたちにより検証されました。まずは、笑福亭松喬さんによる落語です。末期の肝臓がんで入退院を繰り返しながらも高座に上がり続ける人気上方落語家の松喬さん。「先生、私の余命は何ヶ月ですか？」「よめー（嫁）は隣にいてますがな」と、自らの診療経過の話題を枕に会場を笑わせながら、目を患った男が医者により犬の目玉をはめ込まれるという古典落語「犬の目」で満場を爆笑の渦に。

（笑福亭松喬公式ブログに早速アップされていますのでご覧ください）
http://syokyo.net/

その後、釈徹宗氏（相愛大学人文学部教授で浄土真宗本願寺派如来寺住職）の司会で、笑いの研究を進める本学・青木元邦教授と、浅田章氏（相愛大学人間発達学部教授）による短いレポートを踏まえ、山田義美さん（大阪府立急性期・総合医療センターがん患者会「ひまわりの会」会長）、笑福亭松喬師匠、谷尾医師らを加えて、「免疫と健康～笑いは健康の原点」という後半のテーマでディスカッションが始まります。

　青木教授による「笑いと趣味と楽しい音楽が、しなやかな血管を保つために望ましい」というレポート、浅田教授による「健康への復元力を高める笑いを加えて、これからは「医（笑）食同源でいきましょう」といった提案から始まり、笑いがからだに与える影響、笑いがからだの痛みを緩和する、笑いが社交性を高める、笑うことで血圧が安定する、そして笑うことが免疫力を高める、といったさまざまに興味深い話題が取り上げられていきました。もっともっと話を聞きたいという空気が流れる中、土曜の病院内でのイベントでもあり、時間切れとなったところで、本学・荻原俊男学長が、企画、シンポジスト、会場参加者全員に、開催ご協力の謝辞を述べ、同センター始め、森ノ宮医療大学、相愛大学の、今後の継続した取り組みを誓って会を閉じました。
 
「病気のときだけの病院ではなく、日頃から親しむ機会を提供したい」という同センター・吉岡院長が冒頭のご挨拶通り、今年も有意義、かつ楽しく、きっと全員の「免疫力」が大いにアップした３時間半でした。