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<11.5> 「本学×大阪府立急性期・総合医療センター×相愛大学」 連携シンポジウム開催報告

2011年11月07日(月)森ノ宮医療大学
広報室

11月5日(土)、大阪市住吉区の「大阪府立急性期・総合医療センター」内にて、同センターと包括連携協定を結ぶ森ノ宮医療大学、相愛大学の3者連携による医療シンポジウムが開催され、同テーマで昨秋開催し、好評を博した第1回を越える250名余の市民が参加聴講しました。
 
『生と死を、今考える~やすらぎのがん医療~』と題された今回のシンポジウムは、昨年の成果を踏まえつつ、究極のがん医療としての「やすらぎのがん医療(フィジカルな治療に心の治療をプラスして、全人的にがんを克服しようとする医療)」について、その目指すべき医療とは何か、現代医学、東洋医学、宗教、また当事者である患者が、どのような条件・基盤を作っていく必要があるか、参加者とともに考える機会を提供し、人生の終局において、納得してやすらかな気持ちで自分の人生に幕をおろすことができるようにするためには、私たちに何ができるのかを考え、行動を起こそう、という趣旨のもとに、トータル4時間を越える熱い講演・議論が展開されました。
 
「病気のときだけの病院ではなく、日頃から親しむ機会を提供したい」という同センター・吉岡院長のあいさつで開会。相愛大学人文学部教授で浄土真宗本願寺派如来寺(大阪府池田市)住職・釈徹宗先生の基調講演では、現代人は、対価を払ってサービスを受けることに慣れきって生きているため、いざ自分が他者の手を必要とするようになっても、我が身を他人にゆだねる「お世話され上手」になれる人が極めて稀であること。日本文化が育んできた豊かな死の文化を改めて見直し、「自分濃度」を薄めるトレーニングがこれから必要になるのでは、といったお話に、会場が固唾をのんで静まります。

続く本学・坂出祥伸教授(中国思想・道徳思想)は関連講演の中で、日本古来の生命観としての「むすび」の観念とあわせて、東洋医学の身体観・人間観を披露しました。そして同センター・田中副院長が、今後は個々に「かかりつけ医」をもつことの必要性と、病院や施設が病診連携・病院連携し、地域医療機関の機能(役割)分担を図ることで、先進国の中でもダントツに高い日本の病院死率や患者さんの在院日数といった現代的課題解決への足掛かりになるのでは、といった展望を語られて、前半の講演を締めくくりました。

休憩後、これらの提言を踏まえ、新たに5人のパネリストを加えたディスカッションでは、それぞれのお立場から、終末期医療の在り方について意見が交換されました。

本学・山下仁教授(鍼灸師)の東洋医学の「気」の話を、司会を務める毎日放送・大谷邦朗氏が、興味深く聴き出します。がん患者会ひまわりの会会長・山田義美氏は、がん患者やご家族支援の立場から、同センター・緩和ケアチーム看護師長の嶋路紀子氏は、共に寄り添い闘う立場から、キュア(治療)とともにケア(癒し)の大切さを豊富な事例を引いて語ります。そして相愛大学客員教授で浄土宗大蓮寺(大阪市)住職の秋田光彦氏は、「自宅で息を引き取る人の割合が全国No.1である奈良の地域性」など、コミュニティケア最前線の活動から引き出される興味深い話題を、会場の参加者に向かって次々と指摘されていきます。
 
個人的には「朝まで生TV」の勢いでもっと議論を続けてほしいところでしたが、土曜の病院内でのイベントでもあり、時間切れとなったところで、本学・荻原俊男学長が、企画、シンポジスト、会場参加者全員に、開催ご協力の謝辞を述べ、同センター始め、森ノ宮医療大学、相愛大学の、今後の継続した取り組みを誓って会を閉じました。

今回のテーマにふれ、『葉っぱのフレディ~いのちの旅』(聖路加病院・日野原理事長の企画・原案により絵本化、ミュージカル化されて有名に)という作品から荻原学長が一節をひいて朗読された、永遠に続いていくいのちの貴さと、死を恐れない勇気を伝える物語の中の言葉が、今回のような大変むずかしいテーマであっても、自分の問題として「生と死を、今考える」ことの大切さを心に刻む、やさしい余韻となりました。
 

会場の様子会場の様子

荻原学長あいさつ荻原学長あいさつ

坂出教授による講演坂出教授による講演

山下教授がパネリストとして参加山下教授がパネリストとして参加