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<12.11> 東洋医学シンポジウムに鍼灸・理学療法両学科長がシンポジストとして参加

2012年12月25日(火)森ノ宮医療大学
広報室

 平成24年12月11日、北野病院(大阪市・北区)「きたのホール」にて東洋医学シンポジウム「西洋医学と東洋医学の融合を目指して」が開催されました。このシンポジウムには、本学から山下仁 大学院研究科長・鍼灸学科長・教授と金尾顕郎 理学療法学科長・教授、北野病院から福井基成 呼吸器センター長、そして明治国際医療大学から鈴木雅雄 臨床鍼灸学准教授がシンポジストとして招かれました。講演では、東洋医学の基本事項および鍼の有効性が解説された後、東洋医学を導入することで治療成績が飛躍的に向上したという研究報告・症例報告が行われました。北野病院 藤井信吾病院長は、東・西医学の融合についての研究部門を北野病院に設立する構想を披露し、より高質な医療を追及する決意を示しました。
  シンポジストらによる講演に先立って、藤井病院長は、西洋医学に東洋医学を加えることで医療の幅が広がり、西洋医学のみでは解決できなかった問題に対処できるのではないかと期待を述べました。
  第1演者である山下教授は、北欧の病院における鍼の導入率が80%以上と極めて高いこと、ドイツでは鍼に健康保険が適用されるようになったことを紹介しました。その背景として、鍼の有効性および安全性についてポジティブな結果を示す研究がトップレベルの学術雑誌に掲載されてきていることを強調しました。また、鍼が心理面のケアに貢献できることについて、東北の震災被災地で本学の院生が行ったボランティア活動の内容を紹介しながら説明しました。さらに、日本の医療機関に鍼を導入する際の課題についても言及しました。最後に、鍼灸師の質をさらに向上させ、統合医療の一翼を担っていきたいと述べ、講演を締めくくりました。
  次に登壇した明治国際医療大学の鈴木准教授は、講演の冒頭で、鍼・灸とは何か、そしてツボ(経穴)とは何かという基本的な事項を解説しました。また、近代における鍼灸の歴史として、第二次世界大戦後の日本ではGHQによって東洋医学が排斥されたこと、そして鍼麻酔がニクソン大統領に使用されたことをきっかけに鍼の研究がアメリカで活発化したことなどが紹介されました。講演の後半では、医療現場における鍼の臨床応用について紹介されました。そこでは、消化管および脈管の機能が改善した症例、および呼吸器疾患の患者の呼吸が改善した事例が提示され、西洋医学と東洋医学を併用することによって治療効果が増強しうることが説明されました。
  北野病院呼吸器センター長である福井医師は、鈴木准教授がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者に行った鍼治療の効果に驚愕して以来、東洋医学の理論を学び始めたというエピソードを紹介しました。そして、西洋医学のみに基づく診療では治せない患者が東洋医学に基づくアプローチによって劇的に治った事例が多数紹介されました。事例紹介の中で、福井医師は、西洋医学のみでは病気の一面しかとらえることができず、それゆえ東洋医学を取り入れることで患者の病態をより正確に把握することができると強調しました。さらに、東洋医学には多彩な触診技術が存在することに触れ、「西洋医学が発展する陰で「手当て」という医療の基本が忘れられているように思う」と、検査機器によって出されるデータを偏重しがちな現代医療へ疑問を投げかけました。最後に、西洋医学で説明できないことを諦めてしまうのではなく、東洋医学の専門家に相談できるシステムが病院に必要であると述べ、北野病院における今後の取り組みを示唆しました。
 最後の演者である金尾教授は、冒頭で、かつて自身が考案して大きな効果が認められた治療技術が東洋医学の理論によってすでに説明可能であったことに愕然としたこと、それと同時に東洋医学の英知に敬意の念を抱いたことを紹介しました。講演の主題は、“どのようにして理学療法と鍼灸の治療理論を融合させられるか”というものでした。まず、理学療法では、身体の深い部分にある筋を間接的に活性化することで姿勢を安定化させ、すばやい反応を可能にすることが説明されました。そして、深い部分の筋を鍼で直接的に活性化できるのではないかという仮説を提示しました。加えて、異常な緊張状態にある呼吸筋が鍼刺激によって著明にリラックスすることを紹介し、理学療法士による呼吸介助の前に鍼を行うことで相乗効果が大いに期待できると述べました。
  講演終了後の質疑応答においては、北野病院に勤務する多くの医師や他大学の研究者からの質問が途切れることなく行われ、本シンポジウムが参加者に大きなインパクトを与えたことがうかがわれました。
(文責:森ノ宮医療大学 理学療法学科 前田 薫)