リハビリ分野
障がいに応じて生活全体の機能回復をサポートするエキスパート
理学療法士
身体の機能が回復できるように、
運動の指導や治療をおこなうリハビリテーションの専門家。
仕事紹介
理学療法士のお仕事
病気やけが、老化、過度の運動などが原因で身体機能に障がいがある人に対し、理学療法を用いて、基本的な運動能力の回復を図ります。最近ではスポーツ障がいに対するリハビリテーションをおこなうトレーナーとしても注目を集めています。筋力を増強したり、関節の動きを調整するための「運動療法」、温熱・電気などの「物理療法」を用いて身体機能の改善を図ります。寝返り、起き上がり姿勢の矯正・歩行など、生活習慣の改善や指導も行います。
仕事内容
活躍の場
医療系と福祉系の施設が中心。
訪問リハビリも増加傾向です。
理学療法士は、医師や看護師をはじめとする、ほかの医療スタッフと連携しながら治療を実践していきます。義肢装具などの機器の導入や日常生活の動作訓練、さらには障がい者が生活する住宅や部屋のリフォームなどの指導もおこないます。活躍の場は、病院やリハビリテーションセンターなどをはじめ、最近ではスポーツ医学や健康増進・予防医学の領域にまで広がっています。また施設内だけでなく、訪問訓練をおこなうこともあります。
【1分でわかる医療職】『理学療法士』の仕事5つのポイント
活躍する理学療法士さんに
インタビュー
その人らしく生きるために
支援する素敵な仕事です。
Re(再び、戻す)+habilis(適した、ふさわしい)=Rehabilitation(リハビリテーション)。癌という病気に関わり、リハビリの本来の意味を実感。その人らしく生きられるように、日々、笑顔で患者さんたちをサポートしています。
加藤 祐司さん
大阪国際がんセンター
リハビリテーション科
大阪府立柴島高等学校を卒業後、森ノ宮医療大学の理学療法学科に入学。2013年4月、大阪国際がんセンター(旧:大阪府立成人病センター)へ入職。在職中に、森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科保健医療学専攻を修了し、修士(保健医療学)を取得するなど日々、自己研鑽に励む。実習生の指導も精力的に行っている。
がん患者さんへのリハビリテーション
私が勤務している大阪国際がんセンターはがん治療に特化した医療施設です。そのため理学療法士としての役割も、整形外科などを持つ総合病院とは違います。
リハビリテーションは、関節の曲げ伸ばしやマッサージ、歩行訓練などの機能回復訓練として思われていますが、本当はもっと広い意味があります。リハビリという言葉は、2つの単語re(再び、戻す)+habilis(適した、ふさわしい)から成り立っています。つまり、「再びその人らしくなるために」という意味です。
これを知ったのは大学時代ですが、ここに来て、その言葉の意味を実感しています。がんという難病を患っている方が「残された時間をその人らしく生きるために」理学療法士として何ができるかを考えるようになりました。
患者さんの望みを叶えてあげたい
担当する患者さんの年齢は10代から90代までと幅が広くおられます。たとえば骨軟部腫瘍※という病気は10代や20代の若い人に多く発症しやすく、動きに制限があるため、学校に行ってもクラスの友達と同じようにはできません。どういう動作をして、どういうことに気をつければいいのかを本人にアドバイスすることはもちろん、医師や看護師、作業療法士などとチームを組んで話し合い、学校の先生が理解しやすいように写真入りの書類を作成することもあります。
また、患者さんの中にはリハビリがなかなか上手くいかない人もいます。そんな時は他のプランを考え、自分の行っているリハビリが正しいか考え直します。リハビリは患者さん自身がやる気になってくれなくては始まりません。常に、患者さんの悩みや望みを聞き出すように心がけ患者さんに適したリハビリを提供します。
「最期にかっこいい父親の姿を見せておきたい」「自分の力で歩きたい」。患者さんはそれぞれ希望を持っています。回復に向かって前進していく人ばかりではなく、日ごとにリハビリができなくなってくる患者さんも多くいます。私たちの役目は、その人が何を望んでいるかを見極め、その気持ちを大切にし、フォローしていくことだと思っています。
覚えることは山のようにあります。自分の知識やスキルをもっと磨き、患者さんがより生活しやすいようにサポートしていきたい。がんと共存する時代に、その人らしく生きられるように手助けしたいと思います。
- 主に骨や筋肉・脂肪などにできる腫瘍(しゅよう)
理学療法士をめざす高校生のみなさんへ
患者さんの人生をサポートできる理学療法士は大変やりがいのある仕事です。私たちが手を抜けば、患者さんのこれからの人生を台無しにしてしまうほど、その人の人生に大きくかかわる仕事です。相手を観る力、相手の言葉を聴く力を身につけ、ぜひ素晴らしい理学療法士をめざしてください。
資格情報
資格の取り方
指定養成施設・学校で3年以上、専門知識と技術を修得すれば、卒業と同時に国家試験受験資格が与えられます。養成施設には、4年制大学、3年制短期大学、3年制専門学校などがありますが、いずれも病院やリハビリ施設での臨床実習がおこなわれます。国家試験は毎年2月下旬から3月上旬に実施され、一般問題と実地問題からなる筆記試験によっておこなわれます。合格率は、80%前後で推移しています。
資格取得のルート
理学療法士の
国家試験合格状況
(全国平均)
※出所:厚生労働省
実施年によって合格者に多少ばらつきがあるが、80%前後で推移。
資格取得後の
キャリアプラン
介護支援専門員 ケアマネージャーともいい、福祉事務所や居宅介護事業所、高齢者福祉施設などで介護のケアプランを作成する。独立開業も可能。受験資格は、保健・医療・福祉の分野で5年以上の実務経験かホームヘルパー2級以上を持ち、通算5年以上の実務経験または介護に10年以上従事した者。
呼吸認定療法士 日本胸部外科学会、日本呼吸器学会、日本麻酔学会の3学会合同による認定資格。重症患者の呼吸療法、酸素療法の普及と、レベルの向上を目的として創設された。理学療法士としての実務経験2年以上が必要。さらに、指定の講習会などを受講していなければならない。
認定理学療法士 日本理学療法士協会によって認定される資格。申請の条件は、新人教育プログラムを修了しているか免除された者で、専門分野の登録後2年が経過していることが必要。また、必須研修会か協会指定の研修を受講、各領域の履修要件に即したポイントを取得し、10例の事例・症例報告などを行う必要がある。
専門理学療法士 日本理学療法士協会によって認定される資格。認定理学療法士より、さらに実務を重ねた者を対象としている。申請条件は、新人教育プログラムを修了しているか免除された者、専門分野の登録後5年以上が経過していることが必要。これに履修要件に沿ったポイントを取得していなければならない。
施設運営者 リハビリは医師の指導のもと行われる必要があるため理学療法士として独立して開業することはできない。しかし、福祉施設の事業経営者にはなれるので、医師を雇い、事業を運営して理想の施設をつくることができる。理学療法士としての経験を生かすのなら、デイサービスや訪問看護ステーションなどがある。ただ、経営者としてのスキルに加え、福祉関係の起業は制約も大きいため、しっかりとした勉強が必要となる。