医療技術分野

最先端の医療機器を使いこなし、人々の健康を支える専門技術者

鍼灸師

はり・きゅうで経穴(ツボ)を刺激し、自然治癒力を高め、
健康回復・疾病予防を行う

仕事紹介

鍼灸師のお仕事

鍼灸師(しんきゅうし)は、鍼(はり)または灸(きゅう)を使った治療で、自然治癒力を高め、病気の治療や予防、健康回復を行う医療技術職です。はり師ときゅう師は別々の資格ですが、両方を同時に受験する場合が多く、また両方の施術を行う人が多いため鍼灸師と呼ばれています。副作用が少ない治療法として、乳児から高齢者、トップアスリートや妊産婦まで高いニーズがあります。その効果は、アメリカやヨーロッパの医療関係者からも注目されています。人の健康に貢献できる喜びはもちろん、独立開業が認められている国家資格であることも魅力です。

仕事内容

きわめて細いステンレス製の鍼を経穴(つぼ)に刺入し、一定の刺激を与えて痛みや筋肉の凝り、血行の促進を図る。ほかにも鍼を瞬間的に刺入してすぐに抜く方法、鍼に微弱な電流を流すなど、施術法は多様。
よもぎなどの「もぐさ」を使って経穴に熱刺激を与える。もぐさを直接皮膚にのせて点火し燃焼させる「直接灸」と、もぐさと皮膚の間に生姜やにんにくなどの緩衝材を入れる「間接灸」に大別される。
西洋医学で医師が手首の脈を診るのは脈拍を調べるためだが、鍼灸での脈診は身体のエネルギー(気)の流れやバランスを診るために行う。習得は難しいが、効果的とされる。
現代では視診ともいうが、患者の表情、皮膚の状態や血色、また舌の状態などを目で見て、栄養状態や病状を判断する方法。動作や体つきなども併せて診ることで、さらに詳しい状態が分かる。

活躍の場

医療分野だけでなく、
スポーツや美容にも広がっています。

経験が重視される仕事なので、学校卒業後は鍼灸院などで腕を磨きます。その後は独立開業するケースも多くなっています。また、整形外科のリハビリテーションや、内科、神経内科などの疾患の治療に「鍼灸」を取り入れているような病院に勤務する鍼灸師もいます。他に、プロスポーツチームの専属トレーナー、リラクゼーションサロンや美容鍼灸院、高齢者介護施設、教育機関などでの活躍も期待されます。近年では不妊治療の一環として鍼灸治療が行われることもあり、女性鍼灸師も増えてきました。

活躍する鍼灸師さんに
インタビュー

めざすは、心から笑顔になってもらえる治療家になること。

鍼灸師として経験を重ねる川本さん。肩こりや腰痛に苦しむ患者さんたちに笑顔を取り戻してもらえるように、笑顔の接客、心のこもった施術を心がけ、毎日全力で治療に取り組んでいる。

川本 夕紀子さん
株式会社フューチャーシップ
「みらい鍼灸整骨院」

PROFILE 兵庫県立芦屋高等学校を卒業後、森ノ宮医療大学 鍼灸学科に入学。「はり師・きゅう師国家資格」を取得し、2015年4月に数多くの鍼灸院を展開する「みらい鍼灸整骨院」へ鍼灸師として就職。現在は副院長として後進の指導も行っている。

女性患者さんへの配慮は大切です

私が鍼灸治療と関わるようになったのは中学生のときです。中学では陸上部、高校ではカヌー部に所属していましたが、たびたび肉離れや肩の故障を患い、鍼灸整骨院のお世話になっていました。テーピングやリハビリテーションなどで、他の部員たちもたくさん出入りしていました。鍼灸整骨院とスポーツ選手は切っても切れない関係でしょう。将来、身体のメンテナンスに関われる仕事に就きたいと思うようになったのは、このころの影響です。
私が入社して最初に配属された鍼灸整骨院は、地下鉄の駅前すぐという場所柄、患者さんは若い女性が多く、高齢の方は1割程度。デスクワークで肩こりが激しいOLさん、赤ちゃんの抱っこで腕や腰を痛めたお母さんたちがたくさん訪れていました。そのため、カーテンをきっちり閉めて、素肌を見えないようにするなどの配慮は欠かせません。また、女性の肌はデリケートなうえに血管も細いので、内出血などしないように対応には十分に注意を払います。
私が所属する「みらい鍼灸整骨院」は、大阪府を中心に25店舗を有し、全店舗で47名の鍼灸師が働いています。現在勤めている鍼灸整骨院は、最初の店舗とは異なり高齢の患者さんが多く、環境によって患者さんの層が異なることを実感しながら、1日あたり10名程度の患者さんと接しています。
治療に要する時間は、一人当たり約25分。15分間マッサージをして筋肉をほぐし、残りの10分間で鍼灸治療を行います。患者さんたちは、通常週に2〜3回、中には毎日通院される方もおられます。最初は痛みにより無愛想であった方も、施術を繰り返すうちに「楽になった。ありがとう」と笑顔で応えてくれるときが一番好きな瞬間です。やりたかった仕事で生計を立てている喜びと、人々が喜ぶ顔を直に見られる喜びで「鍼灸師になって本当によかった」と実感できます。

東洋医学ならではの奥深さ

鍼灸は日本で古くから行われてきた東洋医学の治療法のひとつですが、東洋医学の考え方というのは独特で、奥が深いです。
たとえば胃の調子が悪いとなっても、胃には直接触れません。手の甲や足の膝下あたりを押さえます。いわゆるツボというものですが、どの疾患に対してどのツボが効果的かを知っているかどうかで、治療の幅に大きな差が出てきます。
耳つぼダイエットや美容鍼灸など、体内環境の改善やリラクゼーションにも効果がある鍼灸は実に奥が深く、毎日が勉強です。

鍼灸師をめざす高校生のみなさんへ

肩こりや首・腰の痛みに悩む女性の増加、美容鍼灸の浸透などによって、女性鍼灸師の需要も高まっています。また、鍼灸師は結婚・出産後も続けられるうえに、独立開業も可能な仕事です。身体にかかわる仕事がしたい人、人と接することが好きな人には、オススメの国家資格です。

資格情報

資格の取り方

資格は「はり師」「きゅう師」別々ですが、高校卒業後に3年以上の鍼灸師養成施設(大学や専門学校)で同時に学び、両方取得するのが一般的です。国家試験は、「公益財団法人 東洋療法研修試験財団」主催により、毎年1回、2月下旬に行われています。試験内容は筆記試験のみで、試験科目は「はり理論・きゅう理論」「解剖学」「東洋医学概論」など幅広い内容となっています。国家試験の合格率は、ここ数年70%台を推移しています。施設により、「あん摩マッサージ指圧師」の資格にも対応している場合があります。

資格取得のルート

鍼灸師の国家試験の国家試験合格状況

※出所:厚生労働省

はり師同様に5年連続で70%台をキープ。

きゅう師国家試験の
合格状況
(全国平均)

資格取得後の
キャリアプラン

独立開業 鍼灸師として独立開業するには、はり師・きゅう師の国家資格を取得していれば可能。治療院も施設設置基準の広さや環境をクリアし、開業後10日以内に都道府県知事への届け出を出せば開くことができる。ただ、鍼灸院の経営には鍼灸師としての技術以外にお金の管理も含めた経営的な能力も必要となるため、ある程度の実務経験は大事だろう。

保健体育科教諭 大学によっては保健体育科の教員免許を取ることも可能。公立、私立の中学・高校の保健体育科教師として働くとともに、担任としての学級運営やクラブ活動を指導する。保健体育の知識だけでなく指導力や生徒とのコミュニケーション力も必要。まず大学で教職課程を選択し、教育実習も行って、中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)を取得しなければならない。その後、教員採用試験を受けて合格する必要がある。

スポーツトレーナー プロスポーツチームやアマチュア団体チーム、スポーツジムなどでトレーナーとして働く。選手のメディカル部門を担当するアスレティックトレーナーと、身体機能の強化をコーチするコンディショニングコーチ(フィジカルコーチ)に分かれる。いずれも鍼灸師としての知識とスポーツ全般の知識も必要なので、自ら勉強しておかねばならない。