医療技術分野

最先端の医療機器を使いこなし、人々の健康を支える専門技術者

診療放射線技師

現代医療に欠かせない
放射線検査・治療をおこなうスペシャリスト

仕事紹介

診療放射線技師の
お仕事

病気の治療に欠かせない放射線を専門に扱うスペシャリストです。医師や歯科医師の指示に基づいて放射線を使った検査や治療をおこないます。レントゲン(X線)やCT、MRI、ラジオアイソトープ検査(RI検査)、がん細胞を破壊する放射線治療などを担当します。放射線医療が拡大しているのに対し、専門技術者は不足状態。また近年は、乳がん検診やマンモグラフィ検査(乳房X線検査)など、女性に対する検査ニーズが増えているため、女性技師への需要が高まっています。

仕事内容

医師や歯科医の指示を受けて行う放射線検査。一般的なX線検査だけでなく、血管造影CTやラジオアイソトープ検査(放射性医薬品を体内に入れて撮影)、また、放射線を使わないMRI検査も扱う。
主にがん治療でがん細胞を破壊するために行う。体の外部から放射線を照射する方法と、体内に少量の放射性同位元素(小線源)を入れる小線源治療とがある。患者本人や周囲への被ばくに注意が必要な作業のため、放射線を扱う場所で働く者の被ばく量測定、放射線を扱う施設内での漏洩線量の測定を常に行う。また、機器の管理、放射線を放出する物質などの管理も必要。安全管理が最大の仕事といえる。

活躍の場

医療系から工業系まで放射線を扱う現場で、幅広く活躍。

大学附属病院をはじめとする病院・診療所・保健所などの医療機関、医療機器メーカーの研究開発部門、原子力工業分野などが活躍の場となっています。また、財団法人などが運営する検査施設もあります。施設内の検査センターや、検診車で企業や学校に赴き、胸部X線や胃検診、マンモグラフィ検査、骨密度検査などをおこないます。放射線を利用した診療や治療は、現代医学には欠かせない技術となっており、今後も医療スタッフの一員として、重要な役割を担う職種です。

活躍する診療放射線技師さんに
インタビュー

検査と治療の両面で学びや経験を生かせます。

小縣 裕二教授
森ノ宮医療大学
保健医療学部 診療放射線学科

PROFILE 1988年4月から大阪大学医学部附属病院中央放射線部で診療放射線技師として勤務。1995年4月からは大阪大学医学部保健学科で助手を務め、後進の指導にあたる。2007年3月に博士(保健学)(大阪大学)取得。2017年10月、森ノ宮医療大学客員教授・特任教授。2019年4月、森ノ宮医療大学大学院教授。2020年4月より現職。

診療放射線技師の魅力

診療放射線技師の「診療」とは「診断」と「治療」を指すため、その両面で力を発揮するスペシャリストです。放射線を使ったX線装置やCT装置などを操作して検査をし、病気の診断に必要な画像を医師に提供します。そして、放射線治療装置を使って、がんの三大療法のひとつ「放射線治療」も担当します。適切な診断や治療に欠かせない検査を担い、体の機能が温存できる治療として期待が高まる放射線治療を行う、非常に重要な役割を果たしています。
機械を操作する印象が強いかもしれませんが、患者さんを前に、その方にとって最も良い方法を探りながら検査や治療を行うため、直接患者さんに関わることが多い仕事です。それがやりがいでもあります。私自身も若いころ、放射線治療で忘れられない経験をしました。毎日がん患者さんに放射線を照射する日々が続くなか、ある日こう言われました。「いつもありがとう。今日もあなたに放射線を当ててもらったら、元気になれるような気がするわ」と。
自分の経験や勉強がすべて患者さんに提供できる点も魅力です。たとえば検査の画像を撮る際も、撮った人の力量が表れます。だからこそ、より良い画像を撮影し、より良い画像処理をするためのスキルアップや経験が欠かせません。さらに医療機器やコンピュータの進展で、昨日までできなかったことができるようになってきた今、探求心を持って勉強すれば能力を伸ばせます。その成果をすべて患者さんに還元できるのは、何よりのやりがいです。

診療放射線技師に求められる資質

医療機器を扱うことから、メカに強い理系人材でなければ、と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。想像力豊かな人であれば、理系・文系を問いません。放射線は視覚や聴覚など人間の五感ではとらえることができない小さな物理現象ですから、原理を理解し、それを頭の中で想像して膨らませて考えることが重要なのです。対象に興味を持ち、学んだ知識を自分の力で深めていく豊かな想像力があれば、どんな人もめざせる仕事です。
放射線の歴史は古く、120年以上前にまでさかのぼります。X線の発見と同時に、診断と治療に利用されるようになり、診療放射線技師は長く医療現場で活躍してきました。最近は乳がん検診にX線によるマンモグラフィー検査の導入が進んでいることもあり、女性の診療放射線技師の活躍も期待されています。

臨床現場で心がけていること

診療放射線技師が主人公のマンガ「ラジエ―ションハウス」がドラマ化されるなど、「なんとなく怖そう」という放射線へのイメージが、少しずつ払拭されてきたように思います。臨床現場では、常に私たちは放射線を扱う際の心構え「恐れず、慌てず、侮らず」を心がけてきました。放射線の質と量を管理する診療放射線技師が、放射線を正しく知って、正しく使うことで、患者さんへの被ばく線量を極力抑えてより良い検査や治療に貢献できます。
今後は研究に進む診療放射線技師も増えるかもしれません。臨床であれば、救急やMRI、IVRなど専門分野での能力を認める多様な認定資格があり、資格取得を目標に生涯勉強ができます。自分の成長を実感し、それを患者さんに提供できる喜びを感じてください。

診療放射線技師をめざす高校生のみなさんへ

診療放射線の学びにおいて、理系分野が大切です。しかし、高校時代に物理を選択していなくても、数学が少し苦手でも、心配は要りません。多くの養成校では、理系科目の基礎(場合によっては高校時代の復習)を学んでから専門科目に入っていきますので、苦手意識も払拭されるでしょう。大切なのは、さまざまな科目やテーマに自ら目を向けて根気強く学ぶ力です。

資格情報

資格の取り方

養成学校で3年または大学の診療放射線学科で4年修業すれば、国家試験の受験資格が取得できます。定められた授業科目と時間数を上回るカリキュラムを設定している学校が多いため、授業はかなりハードです。医学・工学関連の基礎知識を学んだ後、放射線機器の原理・構造・操作法・撮影技術などを修得し、病院での実習に臨みます。国家試験は毎年2月に実施され、合格率は例年、80%前後で推移しています。

資格取得のルート

診療放射線技師の
国家試験の合格状況
(全国平均)

※出所:厚生労働省

合格率は、前年度より0.9ポイントと大幅にアップ。

全体
受験者数
合格者数
合格率