運動療法エビデンス
研究チーム
Therapeutic exercise research laboratory

インクルーシブな考えで運動療法を見える化

運動療法の専門家である理学療法士と臨床工学技士や分子病態学の専門家、解剖学の専門家が集まっています。
どういった構造がどういった機序で問題になっているか(病態)を明らかにし、生体において定量評価することで運動療法の介入効果を証明し、近未来型の運動療法の確立をめざしています。

研究のポイント

私たちが考える近未来型の運動療法は以下の3点を重視しています。

  1. 基礎医学に基づく
  2. 最新のテクノロジー
  3. これまでの限界を破る

理学療法で行う運動療法は科学的でなくては、対象者に自信をもって処方することができません。特に医学の中の理学療法と考えると、基礎医学に基づく必要があります。私たちは解剖学や生理学に基づいた運動療法を考えています。さらに高解像度の超音波画像をはじめとした医療画像や仮想空間、慣性センサーといった新しい技術を積極的に応用します。そのためには、理学療法士だけではなく、専門の違う多職種と連携し、現在の運動療法をリードする研究を発信します。

私たちはこれまでの運動療法の壁を破り、より早く、より良い状態に対象者を導ける技術開発をめざします。

プロジェクトのご紹介

01 変形性関節症の発症メカニズムの解明と治療法の開発

私たちは、これまで関節の構造を明らかにする解剖学的研究や、実験動物を使った病態進展に関わる分子生物学的研究、動作中に関節に加わっている負荷を推定するバイオメカニクス研究、患者の関節構造を可視化するイメージング研究に取り組んできました。そうした専門家が集まって股関節や膝関節、足関節で何が起きているのかを日々研究しています。特に関節周囲に存在する疎性結合組織の線維化とそれを引き起こす低酸素に注目しています。運動療法で低酸素を改善できれば、関節の変形や痛みに苦しむ人を減らせると信じて研究を進めています。

プロジェクトメンバー

主たる研究業績

  1. Spatial distribution of loose connective tissues on the anterior hip joint capsule: a combination of cadaveric and in-vivo study. Masahiro Tsutsumi, Akimoto Nimura, Hajime Utsunomiya, Shintarou Kudo, Keiichi Akita Scientific reports 11(1) 22813-22813 2021
  2. Posteromedial capsular anatomy of the tibia for consideration of the medial meniscal support structure using a multidimensional analysis. Tsutsumi M, Nimura A, Tharnmanularp S, Kudo S, Akita K. Sci Rep. 13(1):12030 2023
  3. Inhibitory effect of low‑intensity pulsed ultrasound on the fibrosis of the infrapatellar fat pad through the regulation of HIF‑1α in a carrageenan‑induced knee osteoarthritis rat model. Kitagawa T, Kawahata H, Aoki M, Kudo S. Biomed Rep. 17(4):79. 2022
  4. Significance of the anatomical relationship between the flexor digitorum longus and sustentaculum tali for reconsideration of the talocalcaneonavicular joint stability mechanism. Tsutsumi M, Kudo S, Nimura A, Akita K. Sci Rep.12(1):15218. 2022

02 Virtual Realityを用いた運動療法の開発

これまでの運動療法は単純な運動の反復や、痛みに耐えながら実施するなど患者にとって苦しいものが多かったです。Virtual reality(VR)を使った運動療法では、退屈な運動療法を楽しい運動療法に変えるのはもちろん,これまで治療が困難だった疾患に対しても驚くほどの治療効果を発揮することがあります。私たちはそのような治療効果のエビデンスとメカニズムに迫る研究に着手しています。現在は脳血管障害による運動麻痺が生じている方々の歩行改善効果とそのメカニズムに迫る研究を行っています。

プロジェクトメンバー

主たる研究業績

  1. Seated Virtual Reality-Guided Exercise Improved Gait in a Postoperative Hallux Valgus Case. Masami Nakamoto, Akihiro Kakuda, Toshinori Miyashita, Takashi Kitagawa, Masashi Kitano, Masahiko Hara, Shintarou Kudo International journal of environmental research and public health 18(24) 2021
  2. Validity and Reliability of Criteria for Plantar Sensation Assessment Using Semmes-Weinstein Monofilament as a Clinically Usable Index. Nakamoto M, Ideguchi N, Iwata S, Tomita S, Morimoto N, Fukuda S, Kudo S. Int J Environ Res Public Health 19(21):14092. 2022

03 難治性運動器疾患における自律神経機能異常と運動療法

関節や腱付着部の障害は慢性化し、様々な治療に抵抗することがあります。そのような治りにくい運動器疾患(難治性運動器疾患)においては、運動器だけでなく、末梢神経の異常が生じていることが知られています.特に血流を調整したりする自律神経系の異常は疼痛との関係が古くから注目されています.しかし、自律神経の機能を非侵襲的に評価すること、運動中の自律神経の異常を評価することが困難でした。そのため、臨床で自律神経機能の異常の有無や有効な運動療法がブラックボックスに包まれていました。私たちは自律神経応答の解析手法を変更することで、運動中の自律神経応答の解析を行い、難治性運動器疾患の症例の中に自律神経応答の異常を伴っている例がいることを発見してきました。現在は自律神経応答の異常の存在を明らかにするとともに、有効な運動療法に関する研究を進めています。

プロジェクトメンバー

主たる研究業績

  1. Evaluation of autonomic nervous system responses during isometric handgrip exercise using nonlinear analysis of heart rate variability. Fukumoto Y, Tsuji Y, Kakuda A, Hori R, Kitano M, Sakamoto K, Kudo S. J Phys Ther Sci.34(10):689-693. 2022