障害支援研究チーム Disability and health research laboratory
その方の持つ障害をどう支援するか
様々な障害を持つ方(身体障害、精神障害、発達障害、老年期障害など)の望んでいる、あるいは必要としている生活の獲得に向けて、その方の持つ障害を評価し、原因を明らかにし、問題を解決する手立てを考えます。そのために障害を評価するための評価法作成や、原因を明らかにするための基礎研究、問題を解決するための支援方法を開発していきます。
研究のポイント
- クライアント中心(top-down アプローチ)
- 人-環境-作業からどのように作業遂行できるかを考える
- 習得的・回復的・代償的・教育的な視点から支援方法を考え、開発する
その方にとって重要な作業を明らかにし、観察評価によって作業遂行分析を行い必要な機能検査を行い、支援計画を立てます。新たな観察評価もクライエント中心の考え方をもとに開発していきます。
その方がどんな身体機能、精神機能を持ちどんな価値観をもって生きているかを前提に、その方の希望する作業は何か、作業の目的は何かなどを考え、そのための物理的環境や人的環境を相互に考えあわせ、どのように作業遂行ができるのか、どうすれば作業遂行できるのかを考えていきます。
アプローチ方法、支援方法を4つの視点で考えます。回復的とは心身機能を向上させる、習得的とは新たな方法を学習する、代償的とは道具を使い生活をしやすくする、教育的とはその人を含む周りの人への障害に対する教育を行うことです。クライエントの問題点と強みを分析しどのような支援を行うかを考え、その方法を開発していきます。
プロジェクトのご紹介
01 高次脳機能障害患者のトイレ動作尺度の開発とトイレ動作に影響を与える因子の解明
私たちは、これまで車いすを使用する高齢者に対してトイレ動作の各動作の自立度およびその自立を妨げる原因系の機能障害を評価できる尺度を作成してきました。そして、トイレ動作の中のどの動作が未自立で、どのような機能障害が各動作の自立を妨げているのかを明らかにしようとしています。その上で、トイレ動作の中の未自立な動作を獲得するために、どのような訓練をどの程度行えば良いかの具体的指標を作成することを目標としています。
プロジェクトメンバー
02 パーキンソン病患者の食事動作(食具選択)への眼球運動障害と情動反応の影響について
私たちは、パーキンソン病患者の食事動作における遅延の原因を究明することに注力してきました。最近の研究では、眼球運動障害や、患者が「嫌な時には動けない」と感じる時の情動の影響が注目されています。これらの要素が食事動作にどのように影響するかを明らかにすることは、パーキンソン病の運動障害全体の理解に寄与すると考えています。この研究を通じて、パーキンソン病患者の食事動作の障害要因を特定し、それに対する具体的な対策や訓練方法を開発することを目指しています。
プロジェクトメンバー
03 パーキンソン病患者の療養生活の看護支援
私たちは、パーキンソン病(PD)患者に対する訪問看護師の実践内容や工夫点を調査し、その結果を可視化することに取り組んでいます。この可視化された看護の体系化と共有を通じて、PD患者へのケアの質の向上とその普及を目指しています。さらに、地域コミュニティにおけるPD患者の看護に関する困難を明らかにし、患者が住み慣れた環境で快適に過ごせるよう、環境面や支援体系の改善についても分析しています。これらの取り組みを通じて、PD患者が地域社会でより良いケアを受けられるように、具体的な方策や訓練プログラムの開発に努めています。
プロジェクトメンバー(本学)
主たる研究業績
- Higashi Y, Kaneda T, Yuri Y, Horimoto T, Somei Y, Hirayama K. Development of toileting behaviour evaluation for Japanese older patients using wheelchairs in a hospital setting: a validation study. BMC geriatrics. 2023 Jun; 23(1): 353. doi: 10.1186/s12877-023-04069-9.
- Higashi Y, Takabatake S, Matsubara A, Nishikawa K, Kaneda T, Nakaoka K, Somei Y, Árnadóttir G. Neurobehavioral Impairment Scale of the A-ONE J: Rasch analysis and concurrent validation. Asian Journal of Occupational Therapy. 2023 Feb; 19(1): 30-37, doi: 10.11596/asiajot.19.30.
- 東泰弘, 高畑進一, 兼田敏克, 中岡和代, 石原充. 古典的テスト理論による日本版ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation (A-ONE)の信頼性と妥当性の検討. 作業療法. 2021; 40(2): 214-224, doi: 10.32178/jotr.40.2_214.
- Higashi Y, Takabatake S, Matsubara A, Nishikawa K, Shigeta H, Árnadóttir G. Reliability and validity of the Japanese version of the ADL-focused Occupation-based Neurobehavioural Evaluation (A-ONE J): Applying Rasch analysis methods. Hong Kong Journal of Occupational Therapy. 2019 Jun; 32(1): 32-40. doi: 10.1177/1569186119825885.
- Iwasa Y, Suzuki M, Saito I. Home Health Nursing Care Time for Patients with Parkinson's Disease. J Pers Med. 2022 Apr; 12(5): 714. doi: 10.3390/jpm12050714.
- 岩佐由美, 鈴木美代子, 岡野紀美子, 木村香里. 在宅のパーキンソン病患者を支える看護実践‐アセスメント、ケア、心構え. 難病と在宅ケア. 2022; 27(11): 29-34,
- Iwasa Y, Saito I, Suzuki M. Differences in Home Health Nursing Care for Patients with Parkinson's Disease by Stage of Progress: Patients in Hoehn and Yahr Stages III, IV, and V. Parkinson's disease. 2021 Feb; 2021: 8834998. doi: 10.1155/2021/8834998.