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高校の勉強って医療職にどう役立つの?

作業療法学科 1年生

写真/作業療法学科 坪井 祐実佳さん(大阪/山田高校出身)

みなさん、高校の勉強は順調ですか?好きな科目があれば、苦手な科目もあると思います。
これって本当に将来の役に立つのかな…と思ったりしますよね。医療系の道に進む場合、高校までの学習内容は、実は将来の医療現場までつながっています。 そのため高校での学びは理系文系問わずすべて必要で、資格取得にも、その後の仕事にも活かされることになります。
今回は6科目それぞれの実例を挙げてご紹介!

先輩たちはどう感じている?

教員に聞く高校の勉強が
医療職に必要な3の理由

医療はさまざまな知識の上に成り立っています。だからこそ、高校までに学ぶ各科目の知識はとても大切です。大学から学ぶ専門的な知識・技術の基礎となります。

  1. 1大学で学ぶ専門知識と深くつながっている。
  2. 2直結する内容が国家試験に出題される。
  3. 3医療現場で求められる知識の基礎となる。
青木 元邦 教授(医師) 青木 元邦 学長(医師)

数学 患者さんの状態を正確に把握し、検査や処置を行うために、
数字を扱う力と計算力が求められる。

医療現場では、さまざまな数字を扱っています。身長や体重、体温、血圧など基本的な情報はもちろん、患者さんの状態を把握し、適切な処置をするためには多くの計算や数式が必要となります。ミスなく計算し、数値を判断しなければ、患者さんの命に関わることもあります。

例えば 国家試験でも出る! 第69回 診療放射線技師国家試験 午後問題74

90 度RFパルス照射 100ms後に横磁化が50%まで減衰する核磁気共鳴現象を起こす試料がある。この試料の横緩和時間[ms]に最も近いのはどれか。ただし、loge 2=0.693とする。

① 34.7  ②69.3  ③72.2  ④144.3  ⑤288.6

【解答と解説】 正解:④ 144.3

パルス照射直後の横磁化をM0、t=100ms[ms]後の横磁化をM(つまり、=M0/2)、横緩和時間をT2とすると、

生物 人体の構造や機能を理解することは「基礎医学」として
すべての医療職に必要な要素となる。

高校時代の「生物」の中でも、特に「人体」に関する内容は、大学での学びや国家試験、さらに実際の医療現場までつながっています。すべての医療職に求められ、高校生物の知識をベ一スに大学でより専門的に学ぶため、大切な学習内容になっています。

例えば 理学療法学科・作業療法学科の学びとの関わり

リハビリテーションで求められる知識

理学療法士・作業療法士は、リハビリテーションに際して患者さんの脈拍や血圧、呼吸や発汗の状態などを確認します。これらは自律神経の働きと関係があり、自律神経は生物基礎の「体内環境の維持と仕組み」に登場します。大学ではその知識を発展させて、身体のリスクや回復の程度を理解していきます。

例えば 鍼灸学科の学びとの関わり

鍼灸でさまざまな疾患に対応する

鍼灸師は運動器の疾患だけでなく、すべての疾患に対応します。肝臓や腎臓など、内臓の病気にも鍼灸を活用します。そのため、まずは各臓器の働きについて、理解することが大切です。これらは生物基礎の「体内環境と恒常性」で勉強し、大学ではその知識をベ一スに病気について学びます。

英語 医療現場では、英語を略した医療用語がよく使われるほか、
外国人患者さんのケアにも生かされる。

医療現場の会話では、さまざまな英単語が日常的に使われています。
これらの医療用語は、大学の授業から頻繁に使用されています。
また外国人患者さんも増加しているため、一部では英語での対応が求められるかもしれません。

例えば 医療現場での事例

患者さんの生命に関する最も基本的な情報をバイタルサイン(Vital Signs)とよびます。vitalは「生命の」、signは「兆候」の意味があるため、単語から内容を理解できます。VSと略され、心拍数(Heat Rate)・呼吸数(Respiratory Rate)・血圧(Blood Pressure)・体温(Body Temperature)などで構成されています。
それらも略語化され、HR・RR・BP・BTとして会話や診療記録などに使われます。他には血液検査で赤血球(Red Blood Cell)はRBC、画像検査でコンピュータ断層撮影(Computed Tomography)はCTとそれぞれ略されるため、単語の意味がわかれば理解が早くなります。

国語 患者さんの状態の記録や、他の医療職と円滑な
コミュニケーションをとるための力が必要。

大学では分厚い教科書や参考書で、膨大な量の文章を読み解いて学ぶため、読解力が求められます。 またレポート課題も多く、文章力も大切です。国家試験や実際の医療現場でも語彙力、文章力、読解力、伝える力が必要です。これらは高校時代の国語が基本となります。

例えば 医療現場での事例

看護師は患者さんの日々の状態を、臨床検査技師や診療放射線技師は検査の所見などを記録していきます。そして、その情報を他の医療スタッフと共有し、チームで医療を提供するのが、現代医療の基本的な考え方です。
チームで情報を共有し、認識を統一しておくため、文章を書き、読み、伝えるといった力はとても大切です。また患者さんや他の医療職と信頼関係を築くために、コミュニケーション力も求められます。

化学 物質名、濃度計算、自然現象などの知識が
専門科目の学修で求められ、国家試験にも出題される。

臨床検査技師など理系要素が強い医療職に限らず、高校時代の化学の知識はすべての医療職で、それぞれ専門科目の学修をするために必要です。物質名や濃度計算、化学結合などは医療現場でも活用されます。

例えば 国家試験でも出る! 第55回 臨床検査技師国家試験 午後問題34 改題

血糖値144mg/dL は何mmol/Lか。ただし血糖の分子量は180とする。

①0.8 ②1.25 ③8.0 ④10.0 ⑤12.5

【解答と解説】 正解 ③

グルコースの濃度は一般にmg/dLで表されますが、代謝など物質量(mol)を必要とするときは、モル濃度(mol/L)に変換します。144 mg/dLは 1440 mg/Lと表すことができます。ここからモル濃度を求めるには、分子量で割ればよいので1440/180 = 8.0となり、答えは8.0 mmol/Lとなります。

物理 患者さんの身体を支えるための「てこの原理」や、
医療機器の原理を知るために電気・波の知識などが重要。

医療現場で患者さんを移動させたり、体位変換させたりする際に「てこの原理」を応用します。また点滴では輸液バッグの高さで落下速度が変わるため、力学的エネルギーから考えます。
大学で物理の活用を学ぶとき、高校での知識があれば理解がしやすくなります。

例えば 医療現場での事例!

病院で使用されている医療機器をはじめとした機器類には、「○○V(ボルト)」「○○mA(ミリアンペア)」「○○W(ワット)」「○○Hz(ヘルツ)」などの単位が書かれていることがあります。これら単位の意味を理解しておくことが、医療現場で必要な機器を制御し、その性能を100%引き出し、患者さんの検査や治療を進めるためには不可欠です。また、音波を使う超音波検査機器や、高周波電流を流す電気メス、X線やガンマ線などを使った放射線機器には、それぞれ物理現象が活用されており、その原理を理解しておくことが必要です。

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